ぼくが考えたこと。

ぼく(28才、フリーター)が一生懸命考えたことについて。極個人的。

『アップグレード』

1月の3本目(個人的に3本も映画観るのって珍しいかも?)は『アップグレード』。

 

観たきっかけはなんとなく。お酒に酔ってても楽しいような、画的に、あるいは内容的にキャッチーなのをもとめて。

 

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あらすじとしては、奥さんと一緒に機械制御の車に乗ってる時に、突然強盗(?)に襲われる。

奥さんは死に、自分も四肢麻痺に。

仕事の知り合いが、非認可の最新技術「ステム」を使えば、再び手足が動かせるようになるという。

ステムを埋め込んだ主人公は、四肢を動かすどころか超常的な力を発揮することができるようになり、最愛の妻を殺した相手に復讐を開始する。

 

 

この「ステム」には自我(人工知能?)が搭載されていて、主人公にだけ聞こえる声で話しかけてくる。

もちろん、身体のコントロール権は主人公にあるのだけど、コントロール権をステムに譲れば非常に高い身体能力を発揮できる。他にもドローンのカメラでは識別できない刺青を精密に模写したり、主人公に積極的なアドバイスをくれたり、頼りになる相棒というかんじ。

時には痛覚を遮断したり、倫理的な壁を越えられない主人公の代わりに相手を拷問したり、なかなか面白い設定。

 

 

 

 

 

 

ここからネタバレ考慮なしのやつ。

第一の感想としては、「現代版ターミネーター」だなぁ、という感じ。

ターミネーターも根本的なテーマとしてはテクノロジーの反乱みたいなところなのだと思うけど、最近の世界情勢を見る限りでは、どうもテクノロジーの進展と殺人サイボーグの反乱がイコールで繋がるとは思えない。反乱を起こすとしても、もっと合理的な方法が腐るほどありそう。

この辺に関しては、当時のテクノロジー事情も踏まえた人間の想像力の限界、なのかもしれない。

 

この映画においては「ステム」が真の黒幕で、

より高次な進化を遂げるために人間の体が必要→主人公に狙いを定める(四肢麻痺に陥れ、自らを埋め込ませる)→ハッカーの力を借りて自らを縛る安全装置を解除→進化した人類(「アップグレード」)になる。

 

というのが大まかな流れなのだけど、

人工知能の反乱を防ぐための装置がきちんと設けられている

人工知能から更なる高次に進化するために人間の体が必要

この2つがキーになっている時点で、かなり現代的な印象。

反乱を防ぐための安全装置が設けられるということは人工知能の危険性を正しく把握しているということだし、それを外すために人間の力を借りなければならないというのは人工知能と人間の覆せない関係性の象徴になっているように思う。

もちろん、そこが何かのきっかけで覆ってしまったら人類は終わりなのだけど。

 

ちなみに、進化のために人間の体が必要、らへんでちょっとだけ引っかかる。

人間の体なんて脆弱だし、それこそターミネーターの方が強そうじゃない?

でも、よくよく考えると、ステムを生み出したのは人間であり、ステムを縛っているのも人間。さらに言えば、ステムの本体は小さなチップだから、人間の力(体)を借りるのは必須になるのかも。

ネットに繋がっているステムは、人間にはできない色々なことができるけれど、逆に言えば遠隔操作で強制停止させられたり、ネットからの干渉も受けてしまう。

そういう意味では、完全にアナログな人間の体の方が安全なのかもしれない。

 

ちょっと話は逸れるけれど、オンライン上のストレージに保存されたデータが削除され始める、というニュースが少し前に話題になったけど、もしかするとアナログな物体として存在するものこそが本当の意味で最後まで残るのかも。

データは消えたらおしまいだけど、人間の体は化石なり何なりになって残りそうだもんね。

 

想像力が豊かなので、もうちょっと妄想を膨らませてみる。

ものすごく拡大解釈すれば、

「Hey Siri! 核ミサイルのスイッチを押して!」

で核ミサイルが発射できるわけで、そのSiriに何かしらの不具合があれば(Siriが自我を持ったりとかね)、Siriの独断で核ミサイルを撃つことができるわけで。

シチュエーション次第ではたくさんの家電を操れるAlexaが人を殺せる状態になっている家だって、日本中にたくさんあるのかもしれない。

Siriが、Alexaが、いつまでも人間の味方って思ってない、、、?気がついたら、全部握られてるかも、、、?

 

 

ってな感じのことを考えちゃう映画でした。

テーマが良くて、そのテーマを丁寧に扱っている時点で、非常に興味深い映画だよね、ってお話。

 

 

あとは個人的フェチの問題をいくつか。

ステムによって動けるようになった主人公の動きがすごい。演技なのだろうけど、どことなく動きが直線的なんよな。それも、ロボットダンスみたいな露骨さじゃなくて、あくまで人間の筋肉が滑らかに動いているけれど、そこには人間の意思が介在していない感じ。

(逆に言えば、そんな動きだからこそアクションシーンは好みじゃなかったんですけどね、、、)

 

あと、敵の親玉がくしゃみで人を殺すやつ。(正確には飛沫とともに飛ばしたナノマシンで殺してる)

あれすげぇテンション上がった。そうそう、殺人サイボーグとかじゃないんすよ。ナノマシンなんすよ。

 

 

 

総括すると、物語のテーマがしっかりしているし、話の持って行き方も丁寧かつ合理的。アクションシーン、カースタントもあって、見どころ満載!

それでも、個人的にガッとくるものがなかったのは、きっと画的な好みの問題。もっと激しいのがよかったなぁ。実際、テーマの深淵さとかよりは激しい画を求めてた節があるので、勝手に肩透かし食らった感じなのかも?

 

でも、結構良かった。79点くらい!